ふるかわひであきが、日頃の出来事をただ淡々と耽々と語ります。ただ淡々と耽々と毎日続けるブログです。くじけた時も、淋しい時も、裏切られても、だまされても、いじめられても、泣かされても、平気な顔して続けます。ブログは歌とカウンセリングとSC便りを超えられるか・・
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訴えるカルガモ

事情

 

ガーガーと鳴き叫ぶカルガモの近くに、もう一羽のカルガモが横たわっていた。

 

この時期のカルガモは繁殖期なので、つがい(雄雌のペア)で行動する。

 

繁殖期のカルガモは、その色合いで雄と雌の判断できる。

 

全体に白っぽいのが雌だ。

 

ガーガーと騒がしく鳴いている方が雄で、駐車場に横たわっている方が雌だった。

 

私は彼女(雌のカルガモ)に近づき、体を触るとまだ温かかった。

 

慎重に彼女を抱き上げると、その首がだらりと下がった。

 

明らかに息絶えていた。

 

彼(雄のカルガモ)はひと際大きな声でガーガーと鳴きながら羽をばたつかせ、私に必死で何かを訴えていた。

 

彼女を抱き上げた私の目の前1メートルほどに、近づいては離れるという行動を何度も繰り返した。

 

彼にとって、これはとてつもなく危険な行為だ。

 

この至近距離で、私が彼を捕獲しようと思って飛び掛かれば、彼は私の餌食となる。(もちろんそんなことはしないが)

 

そんな危険な行為を繰り返しても、彼は私に何かを訴えていた。

 

彼「君が出てきてくれると思ったから、こうして危険を冒してまで鳴き叫んでたんだ。お願いだからなんとかしてくれないか?僕の彼女を助けて欲しいんだ」

 

私「そうしてあげたいのはやまやまだけど、もう彼女は死んでいるよ」

 

彼「嘘だ!ついさっきまで一緒に飛んでたんだ」

 

私「気持ちはわかるけど・・・。ごめんよ。僕は死んだカルガモを生き返らせる方法を知らないんだ」

 

彼「なんでだよ。なんでこんなことになったんだよ。僕たちはとてもうまくやってたんだ。力を合わせて巣を作って、子供を育てようって、さっきまで話をしてたとこなんだ」

 

私「気の毒としか言いようがないよ。でも、とても受け入れられないことだと思うけど、彼女がここで死んでいるのは事実なんだ」

 

私は彼女をできるだけ静かに、優しく地面に置いた。

 

私「さぁ、僕は少し離れたところにいるから、最後のお別れをしてやりなよ」

 

彼は彼女の近くに来てはガーガーと鳴き、すぐにそこから離れ、また近くにまで来てガーガーと鳴いた。

 

三度目に彼女に近づいたとき、彼は狂ったように空に飛びあがったかと思うと、車道に飛び出した。

 

ちょうどそこにグレーメタリックのマツダデミオが突っ込んで来た。

 

私は思わず「危ない!」と叫んだが、ぶつかる寸前に、彼はまた高く飛び上がって轢かれずにすんだ。

 

そのまま飛び去ろうとした彼が、また私と彼女の近くに戻ってきた。

 

彼は何度もおぼつかない両足で地団駄を踏み、羽を大きく広げて「グワ〜ッ」と大声で鳴いた。

 

彼「もう行かなくちゃいけないんだ。僕たち鴨が生きられる時間は人間ほど長くない」

 

私は彼女を再び抱き上げた。

 

私「よくわかるよ。後のことは任せて欲しい。決して君の大事な恋人を猫やイタチやカラスの餌にするようなことはしない」

 

彼はク〜ッと悲し気な声で彼女に別れを告げると、大きく羽ばたいて西の空に飛んで行った。

 

私は彼の大切な彼女を抱いたまま、西の空に彼を見送った。

 

さっきまで止んでいた雨がまた静かに降り始めた。

 

音のない雨の中、私と彼女だけが駐車場に残された。

 

(続く・・・)

 

今日もブログをお読みくださり、ありがとうございます。

5月2日

ふるかわひであき

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